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本症75例の吟味。15歳以下の小児の頭蓋内腫瘍の20%を占める。5歳以下では男児に明らかに多く,5〜10歳では男女差なく,11〜15歳では男児に多い。この性差には意味があろう。長期間,頭痛・嘔吐がある。ことに小さい小児では頭痛を訴える前に嘔吐がみられる。少し大きくなると歩行アタキシーが現われ,持つた物を落す。外直筋麻痺のため複視・斜視がおこる(時にめまい)。ついに患者は傾眠・全身衰弱・言語不明瞭を呈し,頭を一側に傾け,項部強直を示す(10%)。突然脳圧亢進し意識を失う(11%)。小脳発作(opis—thotonic posture)をときどきみる。検査上,鬱血乳頭(90%),四肢または躯幹のアタキシー,水頭症が最も多い。ついで斜視眼震が多く,筋緊張異常,腱反射変化,dorsifle—xor plantar response等の順に頻度が少なく,四肢麻痺,失明,項強直は少ない。この腫瘍の82%は嚢胞状。polycysticは稀。嚢胞に2型あり,嚢胞壁内面を腫瘍が這つているもの,および,壁は非腫瘍性グリア組織であり血管に富む腫瘍が壁から内腔へ突出しているものである。solidの腫瘤をつくるのは18%で,多くは小脳中央線に位置する。組織学的にはKernohanの第1,2度が圧倒的に多く,3度は数例。しかし組織像は予後を正確には表現していない。レ線で縫合離開・床破壊・水頭症頭蓋等の脳圧亢進像は75%。後頭蓋窩拡大は診断に大いに有用。ことに一側の後頭蓋窩が他側に比し大きいとか菲薄,石灰化などに注意をはらう必要がある。脳室造影で90%に異常。空気よりも造影剤がより確実に病巣をうつしだす。できるだけ腫瘤全剔を試みたが,完全に根治術を行ない得たのは66%,残りは部分的切除で,少数はaspiration。部分切除,吸出でも満足すべき回復を得,術後照射をうけた。全死亡率21%。全剔で直接手術死なし。また本報までに(20年以上経過)死亡なし。予後がさわめて良好で部分切除17例のうち12例は健在,5例は腫瘤増大で死亡。全例の70%はほとんど障害なしに職についている。
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