- 有料閲覧
- 文献概要
ガルサン教授の神経科
私が教えを受けているサルペトリエール病院(パリ)のガルサン教授の神経科外来には1日平均40〜50人の患者が訪れ,4人のエクステルヌと1人のアンテルヌがさばき,当番のアシスタンやChef de cliniqueも外来にでて,相談と診療にあたつている。教授の外来診察は週2回で,毎回十数症例が提示される。教授外来診察室は特別に設計されたもので,50人以上の人が見学できる。教授の診察するところは一段と高く,教授の診察がみやすくなつている。診察室に3はつの更衣室が付属し,患者はここで,十分診察しやすいように着衣を脱いで教授の診察をまつ。この更衣室から患者は20歩ほど歩かなくてはならないので,その間に歩行障害やそれに伴ういろいろな状態をよく観察することができる。普通病室は3病棟92床で3人のアシスタン,4人のアンテルヌ,10人のエクステルヌが働いている。1人の患者について各階級の医師が1人ずつ合計3人が受持つ形となり,毎日の回診は原則として,その3人が一緒に行なう。診察の主役はアシスタンあるいはアンテルヌで,エクステルヌは個人として患者をみる場合は別として,もつぱら上級医師の診察を観察し,その口述する所見をその場で病歴に記載してゆく。教授の回診時は,症例の説明の応答は主としてアンテルヌで,アシスタンがこれに補足する。これら毎日の回診には主任格の固定した看護婦がつき,医師の指示をその場で記録し,用紙に必要事項を記入し,回診が終るときには用件の大方は処理されている。腰椎窄刺などはエクステルヌが行なうが,気脳写,脳血管写などの特殊検査は専門家にまかせられる。採血などはLaborantineがきて行ない,注射の大方は看護婦がするので,午後1時頃には医師は1日の仕事を終る。
ガルサン教室にはさらに6病棟289床の慢性病棟(約2/3は施療者)があるが,このうち2病棟約100床が普通病室に準じて毎日診療が行なわれている。ここにはアンテルヌ1名,エクステルヌ4名が配属され,Professeur agrégéのラプレル氏が週1回回診する。以上がガルサン教室の構成の骨組であるが,別の特徴として,ここには神経眼科,神経耳鼻咽喉科,神経放射線科の専門家がいて,毎日の診療に大きな役割を演じている。また同時にラプレル氏を長とする神経病理の研究室もおかれていて,月に20前後の脳が標本になり,毎週午後1回神経病理の示説が行なわれ,月に1回は教授以下多数の教室員が出席して,死亡例の臨床と比較検討しつつ脳の切出しが行なわれる。治療面にとつて必要欠くことのできない理学療法については,ここサルペトリエールではまだ系統的な治療施設はもうけられていないが,ガルサン教室には専門の治療家が実習生を含めて6,7名いて,病棟を治療して回つている。また神経学にとつては,特に記録の保存としての写真・映画が重要であるが,このために専門のLaborantinel名が働いている。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.