書評
J.A.de Casanova, A.Mastrangelo著/伊藤宏訳 慢性呼吸不全の運動療法
山本 敬雄
1
1神奈川県総合リハビリテーション病院外科
pp.807
発行日 1978年11月10日
Published Date 1978/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104064
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呼吸器疾患の運動療法という,わが国では比較的に訓染みの薄い事柄に,大方の読者は戸迷いをおぼえるかもしれない.この本に述べられている運動療法は,われわれが肺理学療法と呼んでいるものから一歩すすめて,肺疾患の予防的処置についてまで拡大して説明されている.
すでに欧米においては,肺理学療法は一般化され,患者自身が持つ呼吸能力を訓練によって最大限に利用し,その換気能力を強化することによって疾病の治療に役立たせており,専門の肺理学療法士(respiratory therapist)が養成されている.すなわち彼らは医師の指導のもとに,看護婦,occupational therapistなどと密接な連携を保ちながら,肺疾患の治療のみならず麻酔後や手術後の呼吸管理に,はば広い医療活動にあたっている.一方わが国についてみると,この方面への理解は必ずしも十分とはいえず,医療従事者のなかにおいてすら関心が薄く,したがってこの領域に関する著書も極めて少い現状である.この意味からも,今回伊藤氏のご努力によって翻訳,刊行のはこびになった本書は,まことに時機をえたものといえよう.とくにフランス語の文献に接する機会の少い私などは,フランスにおける肺疾患治療のきめ細い医療の実態を伺い知ることができた.
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