書評
—和田 豊治 著—臨床脳波
笠松 章
1
1東京大学
pp.55
発行日 1958年1月1日
Published Date 1958/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200637
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脳波装置の普及も最近めざましいものがあつて,わが国でも300台は下らないものと思われる。しかし,その普及にもかゝわらず,十分利用されているかどうかとなると,多少疑わしい点があつて,装置は購入したものゝ,これを活用する医師も,技術者もいないために,部屋の隅に埃をかぶつたまゝあるいは故障のまゝ放置されているという光景には,しばしば遭遇する。この理由の1つは,日本人によつて書かれた親切な入門書がなかつたゝめと思われる。今度畏友弘前大学和田豊治教授の書かれた「臨床脳波」は,この必要をみたすものとして,推奨をおしまないものである。
臨床脳波にたずさわる者として,何よりも大切なことは,脳波所見を正しく判読するということであるが,これには多少の基礎知識が必要である。何も電気技術家のような專門知識が必要であるというのでなく,したがつて,実地臨床家に必要な脳波学士の基礎知識にも自ら限界があるが,著者は十分これを承知して,必要なところを要領よく解説している。このような著書がひろく読まれると,時に学会にまで持ちこまれる脳波の誤つた判読—例えば記録手技の不備や,被検者の身体の動きなどによつておこる"artifact"と真の脳波との鑑別の誤り--もなくなるし,一方,適当な指導者がなく脳波装置を操作しなくてはならない方々にも,よい案内書となると思われる。
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