書評
―和田 健 著―せん妄の臨床―リアルワールドプラクティス
山田 了士
1
1川崎医科大学精神科学教室
pp.810
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102252
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病院で死を迎える人が8割以上にも上る時代である。身体的に重症な患者が多ければ,せん妄は頻発する。特に高齢入院患者の多い今日では,せん妄はもはやcommon diseaseのひとつとであるとも言えるだろう。総合病院においてだけでなく,高齢者を対象とするあらゆる臨床場面において,せん妄の評価や治療は精神科医の必須の業務である。では,せん妄は本当に適切に治療されているのだろうか? リスペリドンやクエチアピン,あるいはハロペリドールの処方をして一丁あがりとはなっていないだろうか? 薬効がなかなか得られず,嚥下障害を併発して,看護者からの冷やかな視線に汗をかいたことはないだろうか?
不思議なことに,せん妄について医師向けに日本語で書かれた成書はこれまでほとんどなかった。日本総合病院精神医学会による「せん妄の治療指針」がほぼ唯一のものだが,出版されてからすでに7年が経過しており,その間新たな知見の集積や治療薬の登場があったことから,アップデートされた知識の集大成が望まれていた。著者・和田健による本書はそのような要望に応えるべく登場したものである。著者は広島市民病院をはじめとした臨床活動のみならず,日本総合病院精神医学会でも理事として数々の重要な役割をこなしながら総合病院精神医療に大きな貢献をなしている精神科医である。せん妄の臨床においてもいまや斯界の第一人者といってよいだろう。
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