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緒言
小脳橋角部腫瘍の大多数は聴神経のNeurinomであるが,多くは片側に来り,両側性のAcusti-cusneurinomは比較的稀である。Henschenは1910年に聴神経腫瘍の集計を試みたが,136例は片側であり,19例が両側性であった。彼は1915年に更に109例の片側性聴神経腫瘍と5例の両側性腫瘍を追加した。両者を合計すると245例の片側性腫瘍に対して24例の両側性聴神経腫瘍が見出されその割合はほゞ10:1である。そして両側性聴神経腫瘍は大多数がRecklinghausen病に属するものであつて,聴神経以外の他の脳神経或は脊髄神経に,或はまた皮膚その他に特有のNeurinom乃至Neurofibromatosisを合併していることが多い。例えばHenschenの24例の両側聴神経腫瘍でも,19例はRecklinghausen病であり,他の部位にも腫瘍が見出されている。その後1930年に至りW.J.GardnerとCharles H.Frazierは両側聴神経腫瘍に関する重要な論文を発表したが,彼等はその中でそれまでに文献として発表されたすべての症例を集めた。そしてHenschenの症例に新しく,18例のneurofibromatosisと合併した両側聴神経腫瘍と2例の孤立性両側聴神経腫瘍を附加した。以上を合計すると44例の両側聴神経腫瘍中37例はレツクリングハウゼン病の系列に入るものであり,小脳橋角部位にのみ限局していたものは僅か7例であった。
その後小脳橋角部位の両側性腫瘍はViggo Christiansen, L.Marchand, S.N.Sawenko, G.Guillain, P.Schmite et Ivan Bertrand等によつても報告された。これより先Harvey Cushingは1924年に「小脳橋角腫瘍」と題する重要なモノグラフイーを記述したが,両側聴神経腫瘍に関しては彼自身は1例も遭遇しなかつたと述べ,その頻度の稀なること,また臨床的診断の甚だ困難のことを強調している。我々も最近複雑な神経症状並に精神症状のために生前診断が困難であった本症を経験し,剖検によつてRecklinghausen病に属する両側聴神経腫瘍であることを確かめることができたので,こゝに報告する。
A case of bilateral acustic neurinoma which-grew in middle age, without any hereditary re-lation was reported. The case presented quite a difficulty in diagnostic examination, on account of its clinical picture which was featured with psychic symptoms covering its fundamental neurological symptoms such as acoustic and optical disturbances. The tumor grew malignant which was proved with autopsy.
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