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靜注式Insulin Shock療法の臨状的並に腦生理學的研究
佐藤 玄一
1
1札幌醫科大學神經科學教室
pp.142-146
発行日 1952年5月1日
Published Date 1952/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200274
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まえがき
周知の樣に1933年Manfred Sakelによつて提唱されたInsulin shock療法は,今日なおわれわれ精神病醫の最も捨て去りがたい優れた治療法であるが,臨床的見地から見た本療法には,主として難解煩雑な治療術式に基く處の缺點を少しとしない。中でも,全身麻醉に匹敵するほどの長時間に亘る周到綿密な觀察を必要とすることや,遷延性昏睡による偶發的死亡例の經驗などは,この療法が,限られた專門醫の手を離れて廣範に普及することの出來なかつた所以ででもあつた。
更に又,終戰前後より衝撃療法として,かつて經驗したこともない程の大量のInsulinを必要とすることがしばしばあつた。これは主にInsulin單位検定法の不備によるものであろうし,或いは魚類InsuIinの特性に由來するものとも思われるものであるが,たまたま,當時輸入されたInsulinSquibbは單に廉價であつたばかりでなく,かかる缺點を些も認められなかつた事實より見て,我國製品の精製過程の不備,粗惡さと云うことも考慮されねばならない。
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