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結論
糖尿病に於て,瞳孔の對光反應異常を呈することは甚だ稀有とせられては居るが,これが存在に關してはおそらく異論のないところであらう。Grube, Westphal, Biermann, Bunke,柳田,新井等によつて既に斯樣な症例が報告せられている。就中Westphalの症例に於ては,その瞳孔對光反應の強直が糖尿病の輕快と共に殆ど消失し,且つその患者の剖檢的顯微鏡的所見は,大腦側室に於ける小腫瘍を發見したに過ぎない。從つて,糖尿病により瞳孔對光反應異常の現われるを確證する點に興味がある。Biermannの症例に於ては瞳孔縮小し,輻輳反應異常に迅速にして,且つ視力障碍,眼底異常を認めず。從つてアーガイル,ロバートソン氏瞳孔を思わしむる點に於て興味がある。何故ならば,該症候はBumke,Adie, Wilson, Merrit et Moore等の見解に從うと,神經梅毒以外にば殆ど或は全く現われないからである。同學の久保教授は,アーガイル,ロバートソン氏瞳孔には眼交感神經麻痺の症候が,對光反應強直と共に必存する事を主張しておるが,本邦にてはアーガイル,ロバートソン氏症候を示すとなす症例に於ても,未だ嘗て斯かる點が吟味せられていない樣である。吾々は幸い瞳孔の對光反感異常を呈せる5例の糖尿病患者に遭遇し得たるを以て,特にこの點に詳細なる檢討を加え,果して斯かる意味のアーガイル,ロバートソン氏症候が神經梅毒以外に出現せざるか否やを吟味し,糖尿病者の中にも眞生アーガイル,ロバートトン氏症候を呈する者あるを證し,併せて糖尿病に基因する諸種の瞳孔對光反應異常に關しで檢討した。もしも本篇が聊かでも該方面に寄與するところあらば望外の榮である。
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