Japanese
English
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昏睡穿刺に就いて
"Coma-Puncture" Exact Experimental Proof of the Presence of the Center of Consciousness in the Brain Stem.
荒木 千里
1
,
竹友 隆雄
1
,
戶田 孝
1
Araki, Chisato
1
,
Taketomo, Takao
1
,
Toda, Takashi
1
1京都大學醫學部外科學教室第一講座
1The Ist Surgical Division, Medical Dept., Kyoto University
pp.354-359
発行日 1949年11月1日
Published Date 1949/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200067
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I 緒言
1944年教室の石井節行はその論文『意識に對する支配中樞に關する實驗的研究』に於いて,昏睡穿刺なる新概念を提唱した。これは猿の腦幹部を細い硝子管により,種々の部位から種々の方向に向つて穿刺した結果,四丘體下丘部の正中線に近い所から刺入して,底面では橋腦延髓境界にて正中線に近い所へ刺出する如き例に限つて,猿は瞬刻にして一過性の昏睡状態に陥つた。それ故に,この穿刺を昏睡穿刺と呼んだのである。石井は更にこの穿刺によつて傷害せられたる腦幹の各部位を組織學的に検査し,損傷を受けたる部の各神經要素に就いて種々の方面から考察を加えた。その結果,昏睡穿刺例のみに於いて共通的に破壞を受けた核群及び線維束の中,意識に對して最も關係の深い部位,即ち意識に対する『スウィツチ』とも稱すべき所は,多分青斑核であろうと推定した。
しかし乍ら,此の實驗はまだ不完全であつた。それはこの實驗に於いて穿刺に用いた硝子管が,直径1.5mmの比較的太いものであつて,これを刺入することによつて,その通路に當る細胞や線維を廣範圍に破壞することと,同時にその通路に近接した部位に對しても相當の壓迫刺戟を加えたであろうと考えられるからである。この點よりして,石井の實驗は意識中樞の大體の位置を示したに過ぎない。昏睡穿刺による腦幹内穿刺管通路及びその近傍の如何なる部位が,眞に『スウィツチ』の役を演ずるかは,尚殘された問題であつた。
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