Japanese
English
--------------------
大腦皮質に於ける運動中樞に就て
On the Motor Centers of the Cerebral Cortex
平澤 興
1
Kō Hirasawa
1
1京都大學醫學部解剖學教室
1Kyoto U.
pp.1-12
発行日 1948年11月1日
Published Date 1948/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200001
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
1
今日最も廣く行われている考に從えば,運動の最高中樞には三種あつて,自律(運動)中樞は視床下部に,錐體外路中樞は大腦核に,錐體路中樞は大腦皮質にあると言われている。しかしこの説はもはや今日そのまゝ許すわけには行かなくなつた。それは大腦波質に於ける運動の局在が決して以前考えた程簡單ではなく,こゝには錐體路中樞のほかに,錐體外路系の運動に封しても自律神經系の運動に對しても,見逃すことの出來ぬ重大な影響を與える部分があるからである。
大腦皮質が自律神經系の機能を持つということは,思考作用とか喜怒哀樂等の種々なる精神作用が涙腺・汗腺・血管,心臓及び性的機能等に影響を與えるという數々の日常の經験からも疑うべからざる事實であり,又條件反射等の研究からも動かすべからざる確證があるが,しかし,大腦皮質の興奮に起因する之等の自律神經機能への影響が,全植物神經生活の中で如何なる地位と意義とを有するかに就ての詳細は,今日迄のところ未だ充分に明かにされてはおらぬ。が系統發生に於ける一般的考察から見ても大腦皮質の植物性機能は,これなくしては植物生活の運転が不可能という如き第一義的のものではなく,この第一義的作用の最高中樞はやはり一般に考えられている如く視床下部で,大腦皮質の自律神經中樞はこれに精神作用に呼應する特殊の色調を與える二次的の調節を行うものと思われる。Allersは大腦皮質は間腦に於ける植物中橿に對してはむしろ末梢をなすもので,皮質から間腦中樞に來る織維は脊髄延髄等からの求心織維の如くafferente Naturのものであろうと述べている。
Copyright © 1948, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.