巻頭言
中樞性肺水腫について
冲中 重雄
1
1東京大學醫學部冲中内科
pp.2
発行日 1954年1月15日
Published Date 1954/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200130
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最近次の樣な患者を診たことがある。中年の頑強な男子で,勿論從來循環器系その他に殆んど病氣らしいものにかかつたことがない。或雨降る夜往來で自動車にはねられた。一時昏倒したが,すぐ意識を恢復し,一寸見ると大した事はない。所が二,三時間すると急に意識が混濁して來ると共に,急激に且つ高度の肺水腫の症状を起して來た。全く泡沫性,少しくばら色のあぶくがあふれるように鼻口と云わず,口からと云わず,おしだされるように出て來る。肺は勿論定型的な理學的症状を示している。全く陸上で水におぼれていると云う感じである。このような状態で數時間後死亡したが,中樞性の肺水腫と云うのはこんなものでなかろうかと感じた事がある。この場合にも末梢の心臟循環器の衰弱も一因となり得ると思われるが,まず中樞性を考えたい所であろう。腦出血患者でも似たような状況が見られることがある。
肺水腫の原因としては周知の如く,鬱血性水腫を主體とする機械的成立説の他,中毒性成立説があり,更に神經性成立説等がある。
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