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症 例 47歳,女性
右視力の低下を主訴に来院し,神経学的には鼻側下1/4盲と軽度の右視神経萎縮がみられた。入院時MRIでは右海綿静脈洞に接して中頭蓋窩の硬膜外に3.5×3.5×3.5 cmの腫瘤を認めた。T1強調画像では脳実質より低信号,T2強調画像で高信号を呈し,造影では不均一に造影されていた(Fig. A-C)。ダイナミックMRIでは腫瘍は辺縁より徐々に造影を受けるパターンを呈した(Fig. D)。Proton magnetic resonance spectroscopy (1H-MRS)では髄膜腫と明らかに異なり,3.6~3.8ppm付近にピーク(Fig. E)を認め,海綿状血管腫と診断した。
コメント
中頭蓋窩海綿状血管腫はまれな腫瘍であり,手術に際して出血が多いことはよく知られており,術前に髄膜腫と鑑別することは非常に重要である。近年,MRIのT2強調画像で高信号を呈することが海綿状血管腫の特徴といわれており2),血管撮影にて造影後期に造影剤の貯留を認めることより診断は可能な症例が多い。髄膜腫との鑑別にSPECTが有効と報告されているが3),1H-MRSは組織の生化学成分の解析が非侵襲的に可能である。髄膜腫の1H-MRSパターンの報告は多く3.2ppmの単一ピークが特徴とされ,これはコリンの-CH3基に相当し髄膜腫の細胞膜脂質代謝を反映しているといわれている。一方,本症例では3.7ppmにピークを認め,髄膜腫の特徴的なピークと異なっていた。このピークは赤血球中のグルタチオンや血液中の単糖類,アルコール類などの-CH基に相当すると考えられ,直接血液プールを反映していると考えられる。コリンピークがないことより,腫瘍は細胞成分が乏しく,ほとんどが血液からなることが示唆された。本症例は,術中腫瘍を穿刺してbio-bondを注入して硬化させたのち全摘出し,病理診断は海綿状血管腫であった。術後視野障害も改善して退院となった1)。
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