「脳と神経」への手紙
特発性低髄液圧症と肥厚性硬膜炎
登坂 雅彦
1
1群馬大学医学部脳神経外科
pp.452
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100492
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拝啓
本誌2002年54巻3号の頼高氏らによる「肥厚性硬膜炎の臨床的検討」を大変興味深く拝読させていただいた。肥厚性硬膜炎の貴重な症例を呈示し,文献上の症例も注意深く検討され非常に参考になる。
呈示された5例中,症例2は他に比して発症年齢が低いこと,無治療で軽快していること,背景疾患が不明なこと,髄液圧が低いことから筆者らは特発性低髄液圧症の可能性を述べている。われわれは現在まで7例の特発性低髄液圧症を経験しているが,低髄液圧症の側からこのような患者を診断する場合,次の3つの条件が必要となる。起立性頭痛,MRIによる硬膜造影の証明,腰椎穿刺(病態から慎重に行う)における低髄液圧の証明である1~4)。特に起立性頭痛の存在の有無が最も重要である。髄液の漏出部位はほとんどが脊髄でありCT-myelographyなどを行うが証明することが難しい場合がある。当症例2では,起立性の頭痛の記載はないものの,明らかなMRI所見と腰椎穿刺での低髄液圧が存在する。また,髄液の漏出のないことについても髄液漏出を証明できない症例が存在することから,特発性低髄液圧症を否定することは困難と思われる。
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