Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
特発性低髄液圧症候群(spontaneous intracranial hypotension:SIH)は1938年にSchaltenbrandにより初めて報告された症候群であり,腰椎穿刺などの明らかな外的誘因なく頭蓋内圧の低下をきたすものである1)。典型例では,立位になって15分以内に起こり,臥位になって30分以内に改善または消失する体位性頭痛2)が認められる。これは腰椎穿刺後頭痛と同じ性質を持つ。また悪心・嘔吐,複視,聴力障害なども多く認められる。平均発症年齢は40歳前後であり,約3:1の割合で女性に多い3)。予後は一般的に良好であるが,一部の症例では硬膜下血腫の合併が認められ4),また,間脳の圧迫による意識障害も報告されている5)。
頭蓋内圧低下の原因としてSchaltenbrandは,1)脈絡叢における髄液産生の低下,2)くも膜絨毛による髄液吸収の亢進,3)硬膜裂孔からの髄液漏出の3つを挙げているが1),RI脳槽シンチグラフィやCTミエログラフィで髄液漏出を検出し得た症例の報告が相次ぎ,現在では脊髄における硬膜外腔への髄液漏出がSIHの原因とする考えが有力となっている。MRIをはじめとした各種画像検査では,この髄液漏出の所見や髄液量減少による脳の下方偏倚の所見が認められるほか,頭蓋骨が正常である場合には頭蓋内の髄液量と血液量は相反性に変化するというMonro-Kellieの法則に従って,髄液量減少に伴って起きる血液量の増加により生じる変化が認められる。
SIHの診断は,これらの画像所見と特徴的な症状を組み合わせて行われる。しかしMRIをはじめとした診断技術の向上により,体位により変化しない慢性頭痛を示す症例や,特徴的な画像所見を呈しながら頭痛を欠く症例などの非典型的な症例の存在が明らかになりつつある6)。このような症例では診断が困難な場合が少なくない。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.