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最近,spontaneous intracranial hypotension(SIH)に対する診断,治療で大きな進歩があった.診断においてMRIでのいわゆるmeningeal enhancementの証明が一般的になったこと1,3),またspinal CSF leakageを検出し直接的に手術する方法が確立しつつあることなどである5).急激かつ激しい頭痛や背部痛で発症しくも膜下出血を疑われることがあることも重要である.(SIHでは脳がわずかに下方偏位を来たすことから,CTにて,迂回槽やシルビウス裂は狭小化し,脳底槽は不明瞭化する,CSFが軽度黄色調を呈することも,くも膜下出血を疑われる要因の一つ.)2,3)また古くから知られているものの重要な合併症として両側の慢性硬膜下血腫(CSDH)を伴うことがある.SIHにCSDHが合併することに関し,逆にCSDHの診断治療においてもSIHを念頭に置くことがポイントの一つであると考えられる.既に1984年大原らはCSDH 44例中,再発を認めた7例中2例がSIHによるものであったことを指摘している4).CSDHの診断の際,くも膜下出血に似た突然の激しい頭痛で発症し,両側性でCTでisodensityを呈し,外傷既往がなく,若年者のものなどはSIHに合併したCSDHを疑い,現在では,まず造影MRIを行って病態を特定すべきであろう(腰椎穿刺は病態の上で望ましくない).1996年に徳野らの報告した「くも膜下出血と診断された両側性慢性硬膜下血腫の2症例」は年齢が43歳,44歳と若く,突然の頭痛で発症し,両側性のCSDHを来たしている.したがってSIHを念頭に入れた診断が必要と考えられる6).SIHに合併したCSDHは,穿頭術を早期に行うと,低髄液圧が基盤にあるため,再発性となる可能性があり,SIHそのものに対する的確な診断と治療が優先されるはずであるが,この点に関しては他の報告においても未だ十分な議論がされていない.今後,CSDHの診断,治療上におけるSIHの意義について再考,再検証するべきと考える.
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