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症 例 25歳,男性
3歳時に,下肢骨折のため,近医整形外科において大理石骨病の診断を受けている。1カ月前より頭痛と,右視力が低下したことが気になり精査目的にて当院を受診した。頭囲は正常であるが,冠状縫合部や矢状縫合部に沿って陥凹が認められた。眼球結膜は貧血なく,眼底所見でうっ血乳頭や視神経萎縮は認めず神経学的な異常所見はなかった。眼科による検査で右遠視の進行はあるが矯正視力は正常であった。他の家族に大理石骨病は認めていない。頭部単純X線写真では頭蓋底はチョーク様の骨硬化が著明で,頭蓋冠は肥厚し放射状に見られる骨膜反応であるhair-on-end appearanceを示していた(図1)。視神経の精査のためMRIを施行し,蝶形骨の骨硬化を認めるが視神経には浮腫はなかった(図2 D)。頭蓋冠には骨髄信号はなく,内板の信号は均一で,外板のみ放射状の線状陰影(hair-on-end appearance)が認められた(図2 A-C)。
コメント
大理石骨病(marble bone disease, osteopetrosis)は破骨細胞の機能不全によって骨硬化像を呈する遺伝性疾患であり,大理石骨病マウスモデル(M-CSFの欠損,転写因子MITFの欠損,c-Src,c-Fosの欠損など)により病態解明がなされている。臨床的には均一,濃厚な骨硬化(chalky bone)を認めるものの,骨自体は脆弱で骨折しやすい。小児期から若い成人期に起こる常染色体優性の遅発性(良性型)大理石骨病は病的骨折で発見されることが多い。しかし,乳児期に発症する常染色体劣性の早発性(悪性)大理石骨病は,骨の過成長のため骨髄機能障害をもたらし,貧血,重篤な感染や出血により致死的である1, 2)。貧血に対して代償性骨髄反応が生じ,膜性骨化の頭蓋冠では放射状の非特異的骨膜反応であるhair-on-end appearanceが出現する3)。鎌状赤血球やサラセミアなどの重症貧血では知られているが,本例のように大理石骨病でも認められるので報告した。頭蓋底では骨硬化肥厚のため神経孔が狭小化し,視力低下,動眼神経麻痺,顔面麻痺や難聴が起こりうるため,本疾患では脳神経麻痺の出現にも注意が必要である2)。
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