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はじめに
もやもや病の発症頻度はわが国において最も高く,1994年度統計調査をもとにした日本全体の症例数推計は3,900例(95% CI:3,500~4,400例),人口10万人当たりの症例数は3.16人,症例数の最大ピークは10~14歳にあり,40歳代にもピークが存在する。人口10万人当たりの年間発症頻度は0.35人,10歳未満の発症が全体の47.8%と最大で,25~49歳に2番目の発症ピークが認められる69)。脳虚血,脳出血(脳内もしくは脳室内出血)の他に痙攣,頭痛,不随意運動などで発症する。20歳未満の症例では60~80%の症例が虚血発作にて発症するのに対して,成人では60%を越える症例が脳出血で発症する7)。
もやもや病の脳出血原因は,脳循環不全に伴い形成された脆弱な新生血管の破綻によると推測されており,脳出血発症例でも脳虚血のリスクがあり,逆に脳虚血発症例でも脳出血のリスクを有する11)。そのため,もやもや病において脳循環を改善することは,脳虚血の再発予防や虚血症状としての知的発育障害の改善24, 44)をはじめ脳出血の再発予防にもつながるとの考え49, 71)で,脳血行再建に関する報告が1970年代から始まり,様々な手術法が提唱されてきた6, 23, 24, 36, 43)。しかし,その効果は十分に証明されたとはいえず4, 44, 58, 59),とくに再出血予防効果については,いまだに議論が多く残るところである1, 10, 14, 28)。
もやもや病に関する血行再建術式については,まず1970年代に直接的血行再建法である浅側頭動脈-中大脳動脈(STA-MCA)吻合術によって始まり24, 38),その後より短時間で容易に行える間接的血行再建術が小児症例を中心に広く普及した34, 43, 44)。さらに,中大脳動脈(MCA)領域のみならず前大脳動脈(ACA)領域さらには後大脳動脈(PCA)領域の虚血症状を呈する症例への治療を目的に,新たな血行再建術も報告された6, 16, 20, 25, 36)。また間接的血行再建術はとくに小児症例において有効ではあったが,必ずしも全例で血行再建が得られるものでなく,このような症例に対しては直接的血行再建術の追加が有用とされる47, 54, 67)。近年ではより広範囲な血行再建を手術後早期から得ることを目的に,複数の手技の組み合わせ,とくに直接的血行再建術と間接的血行再建術の併用が盛んに用いられるようになっている13, 42, 48)。本稿では,もやもや病に対する外科治療(脳血行再建術)について,その治療手技の進歩とともに,脳虚血および脳出血発作再発に対する予防効果をレビューする。
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