Japanese
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特集 大脳機能の新しいパースペクティブ
4.「心の理論」に関する神経心理学的研究と脳機能画像研究
Neuropsychological and Neuroimaging Studies of ‘Theory of Mind’: A Review
望月 聡
1
Satoshi Mochizuki
1
1筑波大学心理学系
1Institute of Psychology, University of Tsukuba
キーワード:
theory of mind
,
mentalizing
,
neuropsychological studies
,
neuroimaging studies
Keyword:
theory of mind
,
mentalizing
,
neuropsychological studies
,
neuroimaging studies
pp.133-141
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100244
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はじめに
私たちは他者とのコミュニケーションの中で生きている。このコミュニケーションが円滑に成立するためには,他者の心を読む,他者の心的状態を理解することが不可欠であると考えられる。そのような心理機構は脳内でどのように成立しているのであろうか。
自己および他者の心的状態(目的, 意図, 知識, 信念,思考,疑念,推測,ふり,好みなどの内容)が理解できるのであれば,その動物または人間は「心の理論(theory of mind:ToM)」を持つ,もしくは「心理化(mentalizing)」能力を持つという。ToMに関してはこれまで,ヒト以外の霊長類を中心とした動物の生態学的・実験的研究,健常児を対象とする発達心理学的研究,自閉症を中心とする発達障害児研究,統合失調症を中心とする精神医学的症例を対象とした研究が行われてきた。さらに近年では,脳損傷例を対象とした神経心理学的研究や,健常者を対象とした神経機能画像研究が行われるようになってきた。本稿では,脳損傷例を対象とした神経心理学的研究,および健常成人を対象とした脳機能画像研究に焦点を絞り,ToMと脳部位・ネットワークとの関連を検討した研究をレビューし,現状を示したい。なおToMに関する総説としては,本稿以外に,Abu-Akel1),Frith & Frith16),Frith & Frith17),Gallagher & Frith18),Siegal & Varley38)がある。
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