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Ⅰ.はじめに
もやもや病は,内頚動脈終末部の狭窄とその周辺で形成される異常な血管網を特徴とする疾患である.この疾患は,1957年に竹内,清水ら東京大学グループによって,内頚動脈に閉塞を認める疾患として初めて報告された55).1968年にはKudoら慶應義塾大学グループが内頚動脈閉塞を病理学的に証明した28).「もやもや病」という特徴的な病名は,Suzuki,Takakuら東北大学グループによる命名で,血管造影によって見える異常血管網が,タバコの煙のもやもやとたちのぼる様子に似ていることからきている.1969年に初めて「Moyamoya disease」の表現が論文53)で用いられ,命名のユニークさから世界中で使われている.現在では,治療としてKarasawaら京都大学および国立循環器病研究センターのグループが1978年に開発した外科的療法25)が行われ,有効な治療法として確立されている.
もやもや病は,白人やアフリカ人では少なく,東アジアの日本,韓国および中国で頻度が高い疾患である.わが国では,約1万人に1人の頻度29)であり,女性に多く,成人では脳出血や脳梗塞によって発症することで知られている12).また約15%に家族歴が認められ,遺伝素因の関与が疑われてきた29).
遺伝素因が強いことから,原因遺伝子の存在が想定され,2000年前後より本格的な遺伝子の探索が行われ,3p24-26 18),6q25 20),8q23 49)および17q25.3 61)が関与していることが報告された.その後,17q25.3については,2008年に15家系を用いた全ゲノム連鎖解析により確認された37).またこの領域はさらに検討され,2010年には,もやもや病患者の領域内の遺伝子Raptorに,一般人口では稀少な多型が高い頻度で見出されることが発見され,この多型と連鎖不平衡にあるハプロタイプに原因遺伝子が存在することが報告された32).その後,この領域にあるRNF213との高い相関が報告され27,23),最終的に厳密な検討によりRNF213が感受性遺伝子として同定された33).感受性遺伝子として同定されたことは,RNF213の変異に加えて何らかの他の要因の関与があることを示唆する.本稿では,頭蓋内血管の狭窄を伴う単一遺伝子疾患を含め,広くもやもや病ともやもや症候群,およびその関連遺伝子を概説する.同時に,共通項からもやもや病の感受性を高める要因についても考察を行う.
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