「精神医学」への手紙
Letter—発作性「90度の傾斜視」例
今岡 健次
1
,
青山 泰之
1
1公立雲南総合病院神経精神科
pp.1248
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904971
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本誌第34巻第1号「90度の傾斜視」について,本邦では初めてとの村田氏らの論文1)を読ませていただき,一昨年11月に経験した同様の症例を想起し,ここに報告させていただきました。
66歳の男性が,1990年10月26日に腹痛にて外科入院。麻痺性イレウスの診断のもとで保存的治療を受け,11月22日退院。この間の10月31日から11月10日までの期間,発作性の90度の傾斜視を繰り返し生ずる。ほかに神経学的,神経心理学的異常所見は認められず,長谷川式DRスケールで31.5点であった。頭部CT(単純+造影),脳波所見は正常(3時間30分の脳波記録中,1度発作性傾斜視生ずるも記録上異常なし)。発作頻度は日に1〜5回,必ず覚醒直後に生じ,短い昼寝の後は生じないこともあり,持続時間は数秒〜10分程度で,瞬間的に元に戻る。必ず,前方への90度の傾斜視である。この様子について,「自分はベッド上に臥床しているが,まるで立ち上がって周囲を見渡していたような光景が見える。例えば,横の壁が足元に見えたり,天井も上にあるのではなく前に見え,点滴の滴下も下の方(自分に向かって)へ落ちてくるのではなく,自分と平行に足元へ向かって落ちているように見える。体は自由に動くが,起きようとすると転ぶような気がするので起きられない。」と語る。
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