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展望
マインドコントロール論を超えて—宗教集団の法的告発と社会生態論的批判(第2回)
Beyond the Concept of Mind Control: legal accusation and/or socio-ecological critic of the religious groups (part 2)
島薗 進
1
Susumu SHIMAZONO
1
1東京大学大学院人文社会系研究科宗教学研究室
1Department of Religious Studies, The University of Tokyo, Graduate School of Humanities and Sociology
キーワード:
Mind control
,
Religious groups
,
Conversion
,
Autonomyt
,
Cult
Keyword:
Mind control
,
Religious groups
,
Conversion
,
Autonomyt
,
Cult
pp.1144-1153
発行日 1998年11月15日
Published Date 1998/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904644
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■リフトンによる共産中国の「思想改造」研究
ロバート・J・リフトンによる『思想改造の心理—中国における洗脳の研究』10)は,当時,「洗脳」として論じられていた現象を,長期にわたるインタビュー調査に基づき,人間の再教育や人格変容のあり方の問題として根本的に考え直そうとする,歴史心理学や社会精神医学の歴史に名を残す力作である。
冒頭でリフトンは本書の副題にも用いられている「洗脳」という語について述べている。「洗脳」という言葉は,不可解で抗しがたい心の支配の方法として恐れられる一方で,通常の教育や心理療法や宗教的指導についても同じことがあてはまるのではないかという疑惑を生み,多くの混乱を生んだ。しかもそれは,「目的的に人間を変えるという心理学や倫理学の問題を看過する」結果をも生んでいるという(4ページ)。洗脳概念によるそうした混乱に代わり,再教育や人格変容のあり方についての研究という枠組みの中で現象をとらえ直す必要がある。共産中国のいわゆる「思想改造」(これも中国人自身による用語)は,個々人に対して抑圧的に働く可能性がある「人間操作」の新たな形態である。
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