巻頭言
精神科医のタイプ分け私案
野村 総一郎
1
1防衛医科大学校精神科学講座
pp.1142-1143
発行日 1998年11月15日
Published Date 1998/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904643
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会合などで精神科医同士が話すと,話しが盛り上がったように感じられても,後から考えると案外噛み合っていなかったと感じられることが多いそうである。雑談ならそれでもよいが,重大な議案をめぐる話し合いでそのようなことがあると,事態は深刻になりかねない。このズレはそれぞれの精神科医の日常が極端に違い,同じ言葉を使っても意味するところに大きな差があるからではないだろうか。特に,治療や患者処遇についての感覚のズレが大きいようだ。例えば同じ分裂病の治療といっても,ある人は社会復帰のシステムを真っ先にイメージするかもしれないし,脳内ドパミン受容体を連想する人もいる。互いの視点を知識としては知っていても,治療の原点に置く風景がどうも違うようである。
そこで,互いの立場をはっきりさせるためにも,精神科医を大まかにタイプ分けし,それを各自自覚するようにしてはどうだろうか。これによって,自分の力と限界を知り,互いの疎通も良くなるというものではないか。筆者は,研究中心の大学人,第一線病院の医者,わりと行政的な仕事と転々と立場を変えてきており,違った立場がわかるつもりでいる。私事で恐縮だが,自分の精神科医史と重ねて,それぞれの面から感じたことを書いたうえ,精神科医タイプ分け私案を示してみたい。
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