婦人の目
14年目の告発
山主 敏子
pp.57
発行日 1969年12月1日
Published Date 1969/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203843
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赤ん坊は自分の食べものを選ぶことができない.母の乳房にすがって,完全無欠と思われる食べものを十分に与えられている赤ん坊は最高にしあわせである.だが母乳が足りないとか,あるいはほとんど出ないために,やむなく人工栄養で育てられている赤ちゃんはこのごろますます増加している.この場合,母は心をこめてミルクを溶き,適温にあたためて愛児に与えてはいるものの,ミルクそのものはメーカーの手を通って入手されているので,もしそのミルクが有害なものであり,乳児の健康がそこなわれたとしたら,責任はだれにあるか.いうまでもなくメーカーにある.
人のうわさも75日というが,忘れっぽい私たちがほとんど忘れていた14年前の森永粉ミルク中毒事件で,いまもなお生れもつかぬ重症身体障害者になって暗い人生をおくっている子どもたちがたくさんいることが,阪大の丸山博教授らの追跡調査で明るみに出て,いまさらのように世のお母さんたちを驚かしている.
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