Japanese
English
連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ
ヒステリー
Hysteria
西村 良二
1
Ryoji NISHIMURA
1
1福岡大学精神医学教室
1Department of Psychiatry, Faculty of Medicine, Fukuoka University, Fukuoka, Japan
キーワード:
Hysterical personality
,
Psychodynamics
,
Defense mechanism
,
Dissociation
,
Conversion
Keyword:
Hysterical personality
,
Psychodynamics
,
Defense mechanism
,
Dissociation
,
Conversion
pp.1007-1009
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102579
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はじめに
ヒステリーという用語は精神医学の歴史の中で最も古いものの1つである。アメリカ精神医学会の精神疾患分類(DSM)ではヒステリーという言葉を使わないが,ヒステリーや神経症という用語は,精神科治療の歴史を振り返る時,今日的にも含蓄のある用語である。ヒステリーとして集積されてきた臨床知は,現在においても患者について生物学的にも心理社会的にも理解を深め,治療の方向付けや,より効果的な介入を考える上で有用であることが見直されてきている。
ヒステリー球(下腹部から咽喉のほうまで球が上ってくるような感じ,咽頭のつかえ),乳房痛,卵巣痛,ヒステリー性のクラーヴス(釘を頭に打ち込んだような,激しい限局性の頭痛)などは,以前はヒステリー特有の印(stigma)と考えられていた。しかし,今日では,そのような症状は診察時の医師の暗示によって生じたものが多いと考えられている。
転換症状や解離症状を持つ患者はヒステリー性格や,特有の発達上の特徴を持つとされ,現在でも臨床に役立つ知識と思われるが,もちろん,すべての患者にあてはまることではない。
本稿では,ヒステリー者の行動様式や発達上の精神力動に関する先人たちからの知的遺産を,専門用語をできるだけ使わず,分かりやすく解説したい。
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