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はじめに―歴史的変遷
解離性障害は,「意識,記憶,同一性,または知覚についての通常は統合されている機能の破綻である」と定義されている。一方,転換性障害は,「器質性の疾患が明らかではないにもかかわらず,随意運動系や知覚神経系に関する症状を示し,背景に心理的要因の関与が予測される」病態であると規定されている1)。
このように,DSM-Ⅳでは別々のカテゴリーに位置づけられている解離性障害と転換性障害であるが,その起源をたどればCharcotの「ヒステリー症例」の報告に行きつくことはあまりにも有名である。その後,「ヒステリー」の身体症状はFreudによって「転換ヒステリー」と名付けられ,Janetは,人格や身体面のさまざまな同一性や連続性が失われた状態を「諸機能の解離」として位置づけた。これらの概念は,20世紀前半の精神医学領域において,いわば『解離された』かのように衰退していたが,1970年代の外傷性精神障害への関心の高まりの中で,精神面の「解離」のみが切り離されて注目されるようになった7)。しかし,1992年に発表されたICD-10においては,「解離性(転換性)障害」として,再び統合された概念としてとらえられている11)。
児童青年期の「解離」や「転換」の症例報告や研究も,成人のそれと同様にCharcotに起源を発し6),同様の経過をたどりながら,成人の「解離」が再び脚光を浴びるようになった20世紀後半頃から活発に行われるようになった2,3)。子どもは本来心身の相関が強く,心理面と身体面を切り離して述べることは,成人よりいっそう困難である。また,子どもの未成熟性ゆえに,正常との境目を設定することは容易ではなく,すべてを病理的と断じることはできない。本稿では,これらの事情を踏まえつつ,子どもの解離と転換が同一の病態を基盤にしているものとして,統合的に概観してみたい。
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