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■はじめに
災害後のメンタルヘルスの問題は,衝撃的な事態に暴露されたことによる心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder;PTSD)だけでなく,喪失体験と結びついた悲哀と抑うつ,あるいは社会的ストレスから生じる様々な心身への影響など多岐にわたる。これらは災害発生から時間が経てば経つほど個別化していくが,災害によって地域社会全体が大きな影響を受けた場合には,社会的ストレスによる二次的影響をいかに低減するかが,長期的なメンタルヘルスケアの重要な課題となる。
阪神・淡路大震災はいうまでもなく都市部を襲った最大級の自然災害であり,広範な地域に住む膨大な数の人々が被災した。したがってメンタルヘルスケアの対象も幅広く多様であるが,様々な問題が集約されているという意味において,仮設住宅は復興期にまず最優先の対象とするべきフィールドであった。この震災では実に48,000戸あまりの仮設住宅が建設された。これらの応急仮設住宅は1947(昭和22)年に制定された災害救助法第23条を根拠として設置される。原則的には滅失世帯の3割以内とされているが,災害の規模によって適正な数が設置される。また,設置期間は2年間と決められていたが,震災後1年単位で使用の延長ができるように関連法が整備された。いずれにしても今回の建設戸数は,同法施行後の災害の中では群を抜いたものであったといえよう。
本稿では,1995年6月に,阪神・淡路大震災復興基金を財源として設置された「こころのケアセンター」5)の活動を通して,被災地の復興期のメンタルヘルス上の問題,とりわけ様々な問題が凝縮されている仮設住宅での問題と課題を論じてみたい。
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