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特集 災害精神医学の10年―経験から学ぶ
日本における災害精神医学の進展―阪神・淡路大震災後の10年間をふり返って
Progress on Disaster Psychiatry in Japan:A review of the decade following Kobe Earthquake
加藤 寛
1
Hiroshi KATO
1
1兵庫県こころのケアセンター
1Hyogo Institute for Traumatic Stress
キーワード:
Disaster psychiatry
,
Disaster mental health
,
Natural disaster
Keyword:
Disaster psychiatry
,
Disaster mental health
,
Natural disaster
pp.231-239
発行日 2006年3月15日
Published Date 2006/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100225
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はじめに─災害と精神医学
災害後に求められる精神医学的関与は,第一に被災者を対象とした医療活動あるいは地域保健活動に参加することである。この活動では,被災者が呈する心理的反応を「異常な状況に対する正常な反応」と位置づけ,心理教育や健康管理などの予防的介入を行うことが求められる。その際,被災者のもとへアウトリーチoutreachし,精神科医療という色彩を可能な限り少なくするという基本的態度が必要である。これは,Norwoodら26)が指摘するように,日常の臨床に携わる精神科医にとっては,いくつかのパラダイムシフトが求められることを意味している。
災害時における精神医学の第二の役割は,被災者が示す心理的反応を精神医学の枠組みの中で記載し評価することである。災害のもたらす心理的影響は,外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder;PTSD)だけでなく,多彩である。その中には,突然の外傷的な喪失体験から生じる悲嘆反応や,災害後の二次的ストレスが影響する気分障害や身体化症状あるいはアルコール依存などの問題が含まれている。被災者を対象とした有効な調査研究を行うことは,症候論的課題を論じ,あるいは疫学的知見を得るためだけでなく,被災者支援の方向性と必要性を提言する上で大きな意義を持っている。
本稿では,出発点となった阪神・淡路大震災とその後の自然災害における,精神保健活動の状況と今後の課題をまず検討する。その上で,本邦における災害後の精神医学的研究の現状についても触れたい。
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