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■はじめに
抗精神病薬の精神分裂病(以下分裂病)に対する有効性はすでに確定しているが,その一方で十分量の抗精神病薬を使用しても十分な効果が得られない治療抵抗性分裂病(treatment-resistant schizophrenia,treatment-refractory schizophrenia)患者が存在するのも事実である。このほかに遅発性ジスキネジアなどの錐体外路症状や悪性症候群といった副作用のために抗精神病薬を必要量使用できないために十分な効果が得られない治療不耐性分裂病(treatment-intolerant schizophrenia)というものも存在し,これらは2つ併せて「広義の治療抵抗性分裂病」として抗精神病薬による治療上の最大の問題の1つとみなされてきた。さらにこのほかに適切な維持療法が行われているにもかかわらず精神症状が再燃するという現象がよく知られており,これを治療抵抗性分裂病の1カテゴリーとみなす見解がある44,45)が,本稿ではそれに関しては触れない。
治療抵抗性分裂病の関連因子として性差,早期発症,神経学的徴候の存在,病前社会適応,脳波所見,脳の形態学的異常所見などが挙げられており,いくつかの総説で詳細に述べられている39)。
治療抵抗性分裂病患者に対しては従来より様々な治療的試みがなされていたが,いずれも満足のいく結果を得るには至らなかった。しかし,近年非定型抗精神病薬の嚆矢というべきクロザピンの有効性が再評価18,42)されるに至り,これらの患者に対する治療は新時代を迎えた。そこで,本稿では治療抵抗性分裂病の定義,疫学,治療学などに関する現在までの知見を総説することとしたい。
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