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はじめに
分裂病治療に抗精神病薬が導入されてまもなく半世紀が経過しようとしている。chlorpromazine(以下CPZ)やhaloperidol(以下HPD)といった定型抗精神病薬(typical antipsychotics)の導入と心理社会的介入の併用によって多くの分裂病患者の症状が改善し,社会復帰あるいは退院するようになった。しかし,その一方で定型抗精神病薬の投与によっても十分に症状が回復するに至らない患者も多数存在する。これらの患者は一般に治療抵抗性分裂病(または難治性分裂病)と呼ばれ,現在の分裂病治療上の最大の問題の1つと考えられている。筆者ら8)は治療抵抗性分裂病の概念や診断基準,および治療に関する問題について本誌1997年7月号において詳細な総説を発表した。その総説において筆者らは,定型抗精神病薬の時代から治療抵抗性分裂病の治療薬であるclozapineが諸外国において再評価され,次いでrisperidone(以下RIS)が開発される時代に至るまでの治療抵抗性分裂病について論じた。しかし,この前後から世界の分裂病治療には数々の重要な変化がもたらされた。1つはclozapine,RISに続く非定型抗精神病薬であるolanzapine,quetiapineなどの開発・導入が進みつつあること,もう1つは様々な治療アルゴリズムが作成されたことである。この2つによって今後は分裂病の標準的治療に大きな変革がもたらされることが予測され,それに伴って治療抵抗性分裂病の概念も大きく変動する可能性がある。
そこで,本稿は次のような順で論述することとする。まず最初に,従来の治療抵抗性分裂病の概念や診断基準に関して簡単に述べる。次いで,前回の総説の執筆時に進行中であった日本における治療抵抗性分裂病の疫学的調査の結果とその問題点について述べる。そして,1997年以降の治療抵抗性分裂病の治療学の進歩に関して論じ,最後に筆者らの意見を述べることとする。
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