Japanese
English
短報
クロザピンの投与により多飲が改善した慢性期分裂病の1例
A Case of a Chronic Schizophrenic Patient Whose Polydipsia was Improved by Clozapine
高田 秀樹
1
,
高橋 義人
1
,
久住 一郎
1
,
小山 司
1
Hideki TAKADA
1
,
Yoshito TAKAHASHI
1
,
Ichiro KUSUMI
1
,
Tsukasa KOYAMA
1
1北海道大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Hokkaido University School of Medicine
キーワード:
Polydipsia
,
Hyponatremia
,
Clozapine
Keyword:
Polydipsia
,
Hyponatremia
,
Clozapine
pp.1209-1212
発行日 1998年11月15日
Published Date 1998/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904653
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精神分裂病患者の慢性期においてよくみられる多飲(polydipsia)は,心因性多飲,強迫的多飲とも呼ばれ,低ナトリウム(Na)血症や低浸透圧血症を合併することが知られている。重症例では意識障害,けいれん発作を伴う水中毒を惹起し,時に致命的となりうる。松田7)によると,一般に神病院入院患者の10〜20%に多飲がみられ,4〜12%が低Na血症を呈し,3〜4%に水中毒が発生しているという。
一方,多飲に関する薬物療法の報告はいくつかみられるが,最近まで治療法として確立したものはなかった。しかし,Leeら6)が,1991年に精神分裂病患者の多飲がクロザピン(CLZ)によって軽快した初めての症例を報告して以来,次々に追試が行われ,その有効性が確認されつつある1,2)。CLZは1960年代にスイスで開発された薬物であり,いわゆる非定型抗精神病薬のプロトタイプとされている。特に1980年のKaneらの報告4)で,治療抵抗性の精神分裂病に対する有効性が確認されたため脚光を浴び,我が国でも1995年より臨床試験が開始されている。今回,我々は慢性期分裂病患者の多飲が,CLZの治療抵抗性精神分裂病に対する臨床前期第Ⅱ相試験(以下治験)中に軽快した1例を経験した。本邦における最初の症例となるため,ここに報告し,若干の考察を試みた。
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