巻頭言
分裂病の予後予測
井上 新平
1
1高知医科大学神経精神医学教室
pp.682-683
発行日 1997年7月15日
Published Date 1997/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904351
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最近もった分裂病家族教育セッションで,ある母親から次のような話を聞いた。患者は23歳の男性で都会で就労していた。数年前から前駆症状らしきものがあり,ついに被害的で命令口調の幻聴により自傷行為がみられたため,やむなく医療保護入院に同意した。入院後1か月頃に主治医から病状説明を受け,「この病気は治らない」「結婚しないほうがいい」「子供は生まないほうがいい」と言われた。暗然とした気持ちでその病院を退院させ,故郷に連れ帰って別の病院に入院させた。
こういった家族の発言は,セッションの中で時折出される。筆者は長期経過を説明した上で分裂病は治せるという姿勢で接するが,ここでは「治らない」という予後予測について少し考えてみよう。ディベート風に言えば「分裂病は治らないという予後予測は正しい」という論題である。
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