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特集 統合失調症の予後改善に向けての新たな戦略
抗精神病薬治療による予後改善―クロザピンを中心に
Influence of Antipsychotic Drugs Including Clozapine on Outcome in Schizophrenia Patients
久住 一郎
1
,
小山 司
1
Ichiro KUSUMI
1
,
Tsukasa KOYAMA
1
1北海道大学大学院医学研究科精神医学分野
1Department of Psychiatry, Hokkaido University Graduate School of Medicine, Sapporo, Japan
キーワード:
Antipsychotics
,
Clozapine
,
Outcome
,
Schizophrenia
,
Suicide
Keyword:
Antipsychotics
,
Clozapine
,
Outcome
,
Schizophrenia
,
Suicide
pp.119-125
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101786
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はじめに
長らく日本におけるドラッグ・ラグの象徴とされてきたクロザピンが,欧米から約20年遅れでわが国でも2009年に上市された。このことは治療抵抗性統合失調症に対する治療の選択肢が大きく拡がったばかりではなく,社会機能に対する治療効果が期待できる薬剤が登場したという意味においても大きな意義があると考えられる。我々が14年間クロザピンを用いて治療してきた治療抵抗性統合失調症患者2症例の経験13,14)では,クロザピンによって難治な幻覚・妄想が著しく改善されるというより,それらの病的体験は持続しながらも徐々にこだわりが減り,それとともに社会機能がゆっくりと回復してくるという印象を強く持つからである。統合失調症患者の予後に対する薬物療法の効果については,何を指標として,どう評価するかという点で議論が多く,方法論もいまだ確立されていない。その中で,クロザピンを用いて治療された患者における予後の評価を検討した研究が比較的多く散見される。本稿では,就業,全般的社会機能などの社会的予後や身体的予後の他,自殺予防,quality of life(QOL)などの観点も併せて,統合失調症患者における予後に対する抗精神病薬の効果についてまとめてみたい。
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