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第31回日本心身医学会総会(会長中川哲也九州大学医学部心療内科教授)は,平成2年6月1,2日,福岡市において盛大に開催された。今回の学会で第1に指摘されるのは,名実ともに日本の心身医学の中心であり,本学会の事務局もおかれる九大心療内科教室の主催であること,本学会の生みの親である池見酉次郎初代教授の後継者の中川哲也教授が会長を務めたことで,いうなれば24年ぶりに里帰りした(昭和41年,池見教授が第7回総会の会長を務められた)本家本元における学会であったことである。それだけに準備に当った心療内科教室の燃え上がる熱意が感じられた素晴しい学会であった。学会の内容も充実したもので,会長講演,特別講演1題,教育講演2題,トピックス3題,シンポジウム2題,一般演題(口演,ポスターセッション)308題の多きを数え,会場はどこも多くの人でにぎわい,実のある討論が熱心に交されていた。
当学会で特筆すべきは,会長講演において中川会長より,「心身医学の新しい診療指針(案)」が呈示されたことである。従来の「心身症の治療指針」(昭和45年,本学会医療対策委員会で作成)は,今日まで心身医学的な診療の啓蒙や普及に大いに役立って来たが,心身医学の進歩,発展,認定医制度の発足などのup-to-dateな状況に即応した大改訂が,今回20年ぶりに行われたものである。その内容は,単に心身症の治療指針ではなく,大きく心身医学全体を鳥瞰する診療の指針として,全体を包括したものとなっている。心身医学の概念,位置づけ,心身症の定義,診療医師の姿勢,診療の一般方針,心理・社会面の検査,心身医学的診断および治療法など多岐にわたって,きわめてクリア・カットに,しかもしっかりした内容でコンパクトにまとめられている。呈示された格調高いこの「(案)」は,今後多少の問題点の整理がなされて,まもなく学会の診療指針として,3000人会員の日常の診療や研究に活用されよう。世界的にも高く評価されると思われるこれは,21世紀へ向けて心身医学のさらなる発展の礎石となり,今後に大きな貢献をするものと考えられる。
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