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日本生化学会総会印象記
吉川 春寿
1
1東大
pp.455
発行日 1956年12月15日
Published Date 1956/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905923
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日本生化学会第29回総会は去る10月31日から11月2日までの3日間,九大医学部で行われた。その前2日間は同じ場所で蛋白質構造討論会があつたので,私は5日間にわたつて福岡にいたわけである。生化学という学問が原子物理学と共に時代の科学だといわれる位にめざましい発展をしつゝあり,したがつて生化学の研究にたづさわる学者,ことにわかい世代の学者が急速に増えたということも原因となつて,特別講演として,Greenstein博士のアミノ酸栄養に関するもの,福本寿一郎教授の細菌amylase及びProteaseの産生機転,本村雄吉教授のK効果を中心として見た脳組織の糖代謝,塙功氏の視細胞におけるPhotometabolism,生化学総会の演題は毎年増加し,今年は一般演題183,蛋白質と酵素の生合成シンポジウム14,脳及び神経の生化学シンポジウム16に及び,第一,第二会場の二つを使つた。
近頃の学会は幻燈使用が多くなつて図表が見やすく,進行も円滑になつて大変結構だが,一面,会場内が暗いのでノートをしたり,あまり聞かなくてもよい演題の間,他の抄録を読んでいるというわけにゆかなくなり,いやでも講演をきかなければならないのは,私の様な不勉強者には苦痛に感ぜられることもある。幸か不幸か,毎日晴天がつづいたので,会期中の半ば以上は外に出て,日当りのよい芝生に坐り,他の人達と誤論風発に時を過した。
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