「精神医学」への手紙
●Letter—触覚幻覚症taktile Halluzinoseそれとも皮膚寄生虫妄想Dermatozoenwahnなのか
伊東 昇太
1
1昭和大学藤が丘病院精神神経科
pp.1144
発行日 1990年10月15日
Published Date 1990/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902936
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「気が狂っている」Verruckt-heitことと「虫がわく」Ungezieferbefallという関係で別のいい方があり,einen Vogel habenはその一つでこれは鳥を飼っているのではなく「完全にいかれている」との日常用語で,さらにeinen Kafer habenは甲虫を持っているのではなく,いらいらして気のふれていることを指す。英語でも似た表示があり「鐘楼のこうもり」bats in the belfryとは気の変ることをいう。アフリカの黒人用語(Kisuaheli語)で神経質で,いらいらしている人を「彼は『まっかな蟻のズボン』rote Ameisen in der Hoseをはいている」という。
蟻で気づくのが「蟻走感」Ameisenlaufenで,専門用語はパレステジーである。これはかゆいばかりか,うずうず,むしゃくしゃする意味で臨床的事実に一致する。虫も例外でない。「虫が頭にいる」Wurmer im Kopf habenとは気まぐれをいい,気の変わることの表示である。悪魔秡い,妄想を棄てさせることをdie Wurmer aus Naseziehenといい,このような文脈は精神病と毒虫が深い関係にあることを指す。
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