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I.はじめに
精神分裂病は最も重要な精神疾患でありながら,その病因は依然として明らかにされていない。その生物学的研究には様々な困難な問題が横たわっている。例えば,精神分裂病は生物学的に異種性heterogeneityをもった症候群であることが指摘されており,どのような病態・側面に対応させた生物学的研究なのかという位置づけを明確にすることが多くの場合,困難であることもあげられる。これには,陽性症状・陰性症状といった概念にそれぞれ対応するような生物学的基盤が存在するのかどうかといった問題5),あるいは長期予後の研究より発症・経過・最終的な予後に様々なタイプが存在することが指摘されていること3)に関係した問題も含まれよう。
そのような状況の中で,精神症状及び再燃準備状態ともに妄想型精神分裂病に酷似している覚醒剤精神病は精神分裂病の生物学的アプローチの有力な手段として取り上げられており,国内外で活発な研究が行われていることは周知の通りである。それは意識混濁を伴ういわゆる外因反応型を起こす他の薬物とは一線を画して,覚醒アミンが人間の精神内界に精神分裂病に酷似した精神症状を引き起こした事実の重み25)から出発したものであった。しかし,人間の複雑な精神現象のすべてが動物の異常行動として捉えられるわけではないし15),得られた研究成果の解釈には慎重を期さなければならないことはいうまでもない。本稿では,このような配慮のもとで,覚醒剤精神病の臨床上の特徴(経過,横断面)を簡単に取りまとめたうえで,主に再注射による急性再燃がどのような機序で起こるかに焦点を当てて行った教室の研究12,13,16〜18,26,27)を中心にして紹介する。
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