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特集 精神分裂病の生物学的研究
覚醒剤精神病と精神分裂病—逆耐性現象に関わるドパミン放出機構の変化
Methamphetamine Psychosis and Schizophrenia: The possible changes in dopaminergic neurons following the repeated intermittent administration of methamphetamine
小山 司
1
Tsukasa Koyama
1
1北海道大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry and Neurology, Hokkaido University School of Medicine
pp.629-635
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902858
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I.はじめに
覚醒剤乱用者が精神分裂病に酷似した精神病像を呈する事実から出発し,本邦における覚醒剤乱用期の臨床的記載を通して,両者の類似性がいくつも指摘されてきた8,11,16,17)。それらを整理すると,一応次のような5点に要約することができる。
(1)急性期の幻覚妄想状態のみならず,慢性期の欠陥状態においても,しばしば類似した病像を認ある。
(2)粗大な器質性脳病変は欠如している。
(3)両者の精神症状は抗精神病薬による治療に反応する。
(4)両者ともに慢性の経過をとる。
(5)経過中に寛解状態が持続していても,情動ストレスや覚醒剤の再使用によって,病像の再燃がみられるなど,高い再発準備性が潜在している。
このような両者の類似性を根拠として,覚醒剤の長期連用によって,中枢神経系に起こる薬物生体反応の変化を明らかにすることは,精神分裂病の発病と再発の生物学的基盤を理解するうえで有力な手がかりとなることが期待される。したがって,覚醒剤モデルは,今日においてもなお,分裂病研究の主要なトピックのひとつであるといっても過言ではあるまい19)。
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