Japanese
English
研究と報告
慢性覚醒剤中毒の幻覚妄想状態にみられる逆耐性現象と抗精神病薬の再燃予防効果
Reverse Tolerance Phenomenon in the Clinical Course of Chronic Methamphetamine Psychosis and Prophylactic Effects of Anti-psychotics on Relapse by Re-use of Methamphetamine
佐藤 光源
1
,
秋山 一文
1
,
中島 豊爾
1
,
大月 三郎
1
,
原田 俊樹
2
,
船越 美保
2
,
長尾 卓夫
2
Mitsumoto Sato
1
,
Kazufumi Akiyama
1
,
Toyoji Nakashima
1
,
Saburo Otsuki
1
,
Toshiki Harada
2
,
Miho Funagoshi
2
,
Takuo Nagao
2
1岡山大学医学部精神神経医学教室
2高岡病院
1Department of Neuropsychiatry, Okayama University Medical School
2Takaoka Mental Hospital
キーワード:
Methamphetamine psychosis
,
Paranoid state
,
Relapse by re-use
,
Prophylaxis
,
Reverse tolerance phenomenon
Keyword:
Methamphetamine psychosis
,
Paranoid state
,
Relapse by re-use
,
Prophylaxis
,
Reverse tolerance phenomenon
pp.1333-1340
発行日 1982年12月15日
Published Date 1982/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203512
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抄録 慢性覚醒剤中毒で幻覚妄想状態を来した21症例を報告した。まず,その臨床経過に履歴現象(臺)を認めた16症例について記載し,長期連用時と再注射による急性再燃時の幻覚妄想状態について考察した。そして,それが注射後の一過性の自己または自我意識の変容であり,分裂病の自我解体と趣きを異にすること,およびその基本的な障害が「外界との適切な関係の途絶」であるとした。第2に,常用していた量よりも少ない量の覚醒剤1回再注射で幻覚妄想状態が急性再燃した4症例,ストレスによる急性再燃もみられた1症例を記載した。そして,覚醒剤中毒の幻覚妄想状態にみられる履歴現象が覚醒剤への異常過敏反応性,すなわち逆耐性現象によることを示した。また,この異常過敏反応性が1年7ヵ月後にもみられ,長期持続性の脳内変化によることを示し,ついで,有機溶媒嗜癖で過去に幻覚妄想状態を来したことがある症例は覚醒剤の連用で早期に幻覚妄想状態に陥いる傾向があることを指摘した。この傾向とストレスによる自然再燃を逆耐性の交差現象としてとらえた。第3に,抗精神病薬服用下でひそかに覚醒剤を再注射していた8症例を記載した。このうち7症例は,ハロペリドール3mg/日といった比較的少量の服薬で急性再燃が抑制されていた。この結果をわれわれの一連の実験的研究成果を取り入れながら考察し,覚醒剤中毒における幻覚妄想状態の再燃しやすさが,断薬後も長期にわたって持続する脳カテコラミン作動系の過敏反応性に由来するものであり,中脳辺縁ドパミン作動系にみられる薬物受容体の増加がその一因を成すと推論した。
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