Japanese
English
短報
長期間にわたり再燃を繰り返した慢性覚醒剤中毒の1症例
An Appearance of Visual Hallucination by Reinjection of Methamphetamine in a Patient of Chronic Methamphetamine Psychosis
小島 秀樹
1,2
,
長沼 六一
1,2
,
蓮沢 浩明
1,2
,
稲永 和豊
1,2
Hideki Kojima
1,2
,
Rokuichi Naganuma
1,2
,
Hiroaki Hasuzawa
1,2
,
Kazutoyo Inanaga
1,2
1久留米大学医学部脳疾患研究所
2久留米大学医学部精神神経科
1Institute of Brain Diseases, Kurume Univ. School of Medicine
2Department of Neuropsychiatry, Kurume Univ. School of Medicine
pp.426-429
発行日 1983年4月15日
Published Date 1983/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203576
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I.はじめに
慢性覚醒剤中毒患者の示す幻覚妄想状態は精神分裂病のそれと酷似している。それ故,慢性覚醒剤中毒の臨床的研究の蓄積は内因精神病の解明に役立つものと考えられており,現在までに数多くの臨床的報告がみられる1,3〜5,12,15)。そして最近の覚醒剤中毒に関する研究の動向としては覚醒剤の投与によって脳に永続的な反応性の亢進が持続する機序の解明に多大の努力がなされているのが現状であろう2,6〜11,13,14,16)。臨床的には覚醒剤によって生ずる種々の精神症状の発現及び再発について情報を集めることが重要である。
われわれは慢性覚醒剤中毒患者の1症例において,幻覚の発現の仕方に注目すべき事実を見い出した。即ち,妄想のみを訴えていた患者が約6ヵ月間の覚醒剤休止後,再注射したところ,そこではじめて鮮明な幻視が発症した症例である。本症例は覚醒剤によって生じる幻視の発現機序に価値ある示唆を与えると考えられるので,その臨床および治療経過を報告し,幻覚・妄想の発現および再燃について論じてみたい。
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