Letter to the Editor
Letter—向精神薬による悪性症候群の発熱について
岩淵 潔
1
1東京都精神医学総合研究所神経病理研究室
pp.563
発行日 1990年5月15日
Published Date 1990/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902850
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向精神薬による悪性症候群(NMS)の重要な症状の一つとして発熱がありますが,発病当初にみられる発熱様式に関して意外に議論が少なく思い,私見を指摘させていただきます。
NMSでは単に感染症状を伴わない発熱というだけではなく,その分布にも特徴があります1)。それは体幹以上で発熱をみても,四肢(とくに下肢遠位)では冷たく,血圧や脈の不安定も認めます。増悪して腹部以上に高熱や玉のような発汗をみても,四肢では発汗を欠いています。しかし,二次感染が加わると四肢にも発熱を認めます。NMSの中核的な障害は向精神薬による自律神経系異常にあると私は考えており,上記の現象は,NMSによる自律神経系の中枢性障害に基づく末梢血管運動調節の異常による代償性発熱・発汗現象も加わったものと考えています。同様な代償性の発熱・発汗現象は,Shy-Drager症候群など自律神経障害が重要症状となる多系統萎縮症(Oppenheimer)や頸髄損傷患者で経験されます。前者では比較的早期より四肢が冷たく,重症化した時期にふとんをかけたまま臥床していると,体幹や顔面に発汗があっても,四肢は冷たく汗をかいていないことがあります。頸髄損傷者は体位の変換が不能なため,とくに夏場の睡眠時に放熱ができず,頭部に代償性の多量の発汗や発熱がみられます。
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