「精神医学」への手紙
Letter—『精神を病むということ』の書評について
岡田 靖雄
1
1精神科医療史研究会
pp.331
発行日 1991年3月15日
Published Date 1991/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904925
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秋元波留夫・上田敏両氏の対談をまとめた上記の本が,秋元氏の若々しい情熱の表出であるという点で,わたしは評者木村敏氏(本誌32;1376,1990)に同意する。また,秋元氏が精神医学史につき多くの挿話をもりこまれているその探究心に敬意を表するものである。だが,精神医学史に関する所説が,木村氏がいうような“学問的にも正確な内容”かという点には,深い疑問を感じている。かなり多くみられる不正確な記述から,いくつかあげよう。
“精神病”の言葉の使用は明治以後である(25ページ)とあるが,この語は緒方洪庵訳『扶氏経験遺訓』に使用されている。『病の艸子』の原本はロンドン大英博物館に(32ページ)ではなくて,わが国にあり,大英博物館にあるのはその模本である。『精神病約説』の原本はモーズリの“Physiology and Pathology of the Mind”(44ページ)ではなく,“Insanity”である。
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