特集 若年性認知症の疫学・臨床・社会支援
特集にあたって
粟田 主一
1
1東京都健康長寿医療センター研究所
pp.1427-1428
発行日 2020年11月15日
Published Date 2020/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206212
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一般に,65歳未満で発症する認知症を若年性認知症と呼んでいる。若年性認知症の有病者数は,高齢発症の認知症に比べると遥かに少ないが,年齢が若いために,就労の継続,世帯の経済,子の養育,老親を持つ場合には家族の多重介護など,本人・家族は,高齢発症の認知症とは異なる深刻な問題に直面する場合が多い。また,高齢発症の認知症と比較すると,社会全体の若年性認知症に対する理解は一般に低く,本人・家族は必要な情報やサービスに繋がれず,社会の中で孤立する場合も少なくない。こうしたことから,若年性認知症施策の立案に資する基礎資料を得るために,疫学的調査を行うことが強く求められてきた。
わが国では,これまでに,全国規模の若年性認知症の有病率・生活実態調査が3回行われている。1回目は,1996年度に一ノ渡らが全国5都道府県で実施した調査であり,若年性認知症の有病率は18〜64歳人口10万対32人(未回収票に同率の有病者がいると仮定した場合47.8人),有病者数は2.56万人(同上3.74万人)と推計された1)。2回目は,2006〜2008年度に朝田らが全国7都道府県で実施した調査であり,未回収票に対し重み付けをして補正した若年性認知症有病率は18〜64歳人口10万人対47.6人,有病者数は3.78万人とされた2)。これらの調査結果を踏まえ,若年性認知症ハンドブック,若年性認知症コールセンター,若年性認知症支援コーディネーター,介護保険サービスにおける若年性認知症加算などさまざまな施策が実施されてきた。しかし,それでも,若年性認知症の当事者のニーズに合ったサービスは今なお著しく不足している。
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