特集 認知症の人の認知機能障害,生活障害,行動・心理症状の構造
特集にあたって
粟田 主一
1
Shuichi AWATA
1
1東京都健康長寿医療センター
1Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology, Tokyo, Japan
pp.895
発行日 2016年11月15日
Published Date 2016/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205262
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認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)という用語は,1996年の国際老年精神医学会のコンセンサス会議において提唱されたものである。同会議において,BPSDは,「認知症患者に頻繁にみられる知覚,思考内容,気分または行動の障害による症状」と定義され,それは,「①疾病過程の不可欠の要素であり,②本人,社会,保健医療サービス,認知症と関わるすべての人にとって深刻な問題になっているが,③その多くは緩和することが可能であり,それによって本人の苦悩,家族の負担,認知症に関連して生じる費用を軽減させることができる」とされ,それを実現するための国際的な研究の必要性が強調された(Finkel SI, et al:1996)。
それから20年の歳月が流れた。その間に認知症の自然科学的研究および社会科学的研究は確かに進展した。多くの先進諸国において,認知症施策は国家の優先課題と位置付けられるようになり,投入される国家予算は着実に増えた。さらに,近年では,認知症とともに生きる本人の権利を尊重し,認知症とともに暮せる社会(Dementia Friendly Community)の創成に向けた活動の萌芽もみられるようになった。
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