特集 高齢者の精神科救急・急性期医療
特集にあたって
粟田 主一
1
1東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
pp.991-992
発行日 2019年9月15日
Published Date 2019/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205892
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
総務省消防庁が毎年報告している「救急・救助の現況」1)を見ると,救急自動車によって搬送される人員のうち高齢者が占める割合は,その年の高齢化率の2.1〜2.2倍で推移していることが分かる。2017年の実績でも,救急搬送人員5,736,086人のうち65歳以上高齢者が占める割合は58.8%であり,この数値はその年の高齢化率(27.7%)の2.1倍であった。仮にこの倍率が一定であると仮定すると,救急搬送人員における高齢者の割合は2020年には60%,2030年に65%,2060年には80%を超えるものと推計される(図)。
一般の救急医療機関を受診する高齢者のうち,認知症を有する高齢者の出現頻度は定かではない。筆者らが2007年に一指定都市の救命救急センターで実施した調査2)によれば,1か月間に救命救急センターを受診した65歳以上高齢者307人のうち,約3割に認知症の併存が疑われた。この数値を一般化することはできないが,わが国の65歳以上高齢者における認知症有病率が2012年の時点で約15%と推計されている3)ことを考慮すると,救急搬送される65歳以上高齢者における認知症有病率は,その倍程度と見積もることができるかもしれない。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.