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みなさまは,日本の精神科医が結集して実施しました「大うつ病に対する新規抗うつ薬の最適使用戦略を確立するための大規模無作為割り付け比較試験(SUN☺D試験)」をご存知でしょうか。本臨床試験は,2010年から2015年にかけて,全国9大学とその関連施設の合計48医療機関にて合計2,011人の大うつ病患者さんにご参加いただいた,世界で3本の指に入る医師主導の多施設共同試験です。その結果は,2018年に論文化されています(Kato T, Furukawa TA, Mantani A:Optimising first-and second-line treatment strategies for untreated major depressive disorder-the SUN☺D study:a pragmatic, multi-centre, assessor-blinded randomised controlled trial. BMC Med 16:103, 2018)。本研究からは,私たちのうつ病診療を見直すきっかけになる興味深い知見が得られております。ぜひ一度わが国の精神科医の研究グループが世界に発信した貴重な成果に触れてみていただけますと幸いです。
本臨床試験は,その結果の意義もさることながら,現場の精神科医自身が研究グループを組織し,自ら汗をかきながら自分達の力で運営そして研究を実践することを通して,実に多くの深い学びを提供してくれました。私自身も共同主任研究者としてこの臨床試験に参加させていただきましたが,臨床医が力を合わせ,またさまざまな領域の専門家の協力を得ることで,世界に伍する臨床研究を実践できることを経験でき,自身の臨床医や研究者としての価値観が大きく変わることにもなりました。こういった経験は,私自身にとっても何にも代え難い貴重な宝ものになっています。
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