特集 医療現場での怒り—どのように評価しどのように対応するべきか
特集にあたって
明智 龍男
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野
pp.1233
発行日 2019年11月15日
Published Date 2019/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205928
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怒りは人にとって普遍的な感情であり,心理学者のPaul Ekmanによると,恐れ,喜び,悲しみ,驚き,嫌悪と合わせて基本感情の一つとされている。実際に,私たちも日常的に怒りを感じ,時には怒りのコントロールに苦悩することもある。怒りそのものは疾患単位ではないものの,感情の一つであるため,脳機能や気分に関連して,医療現場でその評価やマネジメントに悩むことは日常的にみられることでもある。実際に,医療現場で仕事をしている人たちの中で患者さんやご家族の怒りで悩んだ経験を持たない方はいないのではないだろうか。
筆者は精神科医として,がん患者をはじめとした身体疾患患者のメンタルヘルスを専門にしてきたが,その経験の中でも実に多くの怒りに出会い,悩んできた。また,日常的に看護スタッフから怒りを有した患者さんやご家族のケアや対応の相談を経験してきた。その経験からは,怒りには正常心理の範疇のものから,脳器質的なものまで,あらゆる病態に起因するものが含まれていた。怒りは暴言や暴力につながることもあり,医療スタッフのメンタルヘルスの維持あるいは医療安全の観点からも重要なテーマである。
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