特集 死別にまつわる心理的苦痛—背景理論からケアおよびマネジメントまで
特集にあたって
明智 龍男
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野
pp.1571-1572
発行日 2022年12月15日
Published Date 2022/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206794
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超高齢社会を迎えた現在のわが国は多死社会とも言われており,その多くが疾病罹患による死である。したがって,多くの死別に医療が関与する。患者の死は,医療者にとっての治療の終結であっても,遺族にとっては死別の苦しみの中で生きてゆくことの始まりを意味する。最愛の家族を失うことは,多くの人にとって,人が経験するライフイベントの中で最もつらい出来事である。たとえば,がんは患者のみならず家族にとっても大きな苦しみとなるため,サイコオンコロジーでは,がんを「家族の病」として捉え,家族もケアを提供されるべき存在として「第2の患者」と呼ぶ。家族や遺族のケアに際して最も重要なものの1つがグリーフケアである。
グリーフ(grief)とは,近親者の死を代表とする喪失によってもたらされるさまざまな反応を包含した概念であるが,一般的には深い悲しみや苦悩などのこころの状態に焦点をあてられることが多い。愛する人との死別によって悲しみを経験することは,人間にとってごく自然で普遍的なこころの動きでもある。一方で,死別は遺族の考え方や価値観のみならず身体的な健康にも影響を及ぼし,時として自死という悲痛な結末に関連する。
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