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精神疾患の診断に際して,多くの場合,器質因の除外が重要であり,その際,血液,髄液,生理,画像などさまざまな検査が行われ,心理検査も適宜併用される。一方,周知のとおり,認知症やてんかんなどの疾患では,脳画像や脳波検査などは診断確定の際に必須の検査となる。最近注目されている自己免疫性脳炎など,病態が徐々に判明してきている疾患については,一部施設でのみ特殊な抗体などの検査が研究目的を兼ねて実施されていることが多く,現時点ではルーチンの確定診断のための必須検査にはなっていない。最新の研究成果として,リキッドバイオプシーで認知症の診断が可能になったとか,ナルコレプシーの原因としてヒト白血球抗原(HLA)との密接な関連が判明したなどの報告も相次いでいる。
医学は日進月歩である。実際,私たちが日常臨床に従事し,ある疾患を疑った際に,実際にはどのような検査が必須で,鑑別診断のためには何が必須であるかなど,十分理解できていないのは私だけであろうか。自身のことを考えれば,古い教科書レベルの知識の範疇であれば若手に自信をもって伝えられるが,最新の知見などについては十分に把握できているとは言い難い。たとえば,先日も,ごく軽度の意識障害を疑わせる20代前半の急性の興奮状態の患者さんの診察を依頼された。自己免疫性脳炎が疑われたため脳神経内科にも依頼されており,精神科の担当は急性精神病状態の管理が主たる目的であったが,その際に脳神経内科医と話していて,随分自分が知らない抗神経抗体がたくさん見つかっていることを知った。果たして,専門医がいない状態で自分がどこまでその疾患の診断が適切にできるのか懸念を払拭できなかったことが本特集を編んでみようと思った直接のきっかけである。
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