Japanese
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特集 精神医学における主観と主体
精神疾患の主観的症状理解に向けた脳科学からの視点
Neuroscientific Perspective on Subjective Symptoms of Psychiatric Disorders
柳下 祥
1
Sho Yagishita
1
1東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター構造生理学部門
1Laboratory of Structural Physiology, Center for Disease Biology and Integrative Medicine, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, Tokyo, Japan
キーワード:
Subjective experience
,
Neuronal circuit
,
Fear
,
Pain
,
Reward
Keyword:
Subjective experience
,
Neuronal circuit
,
Fear
,
Pain
,
Reward
pp.561-567
発行日 2019年5月15日
Published Date 2019/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205833
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抄録 知覚や情動は主観的な体験でありながら他個体との一定の共有が可能であり,ヒト社会が構築される基盤となっている。骨折により痛いという主観的な体験は容易に他者と共有でき,さらに生理学的な理解により脳幹反応から音が聞こえないという主観的な体験についても他覚的な記述による共有が可能になった。このように生理学的問題に変換することで主観的体験の随伴現象を扱うことが可能になる。精神疾患の症状に関係する脳機能は生理学的な分析は難しいが,近年の光遺伝学による神経回路の詳細な分析が進んでおり,今後は種間・個体間で共通性が高い神経回路の理解が発展し,一定の生理学的記述に基づく共有が可能になると期待される。さらに脳は経験を通して可塑性によりさまざまな回路修飾を行うため,必然的に個別性が高く共有困難な主観的問題を抱える。それゆえ個別性を扱う計算科学の発展と個別性に向き合うヒト自身の理解の相補的発展が必要であろう。
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