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特集 こころの発達の問題に関する“古典”をふりかえる
自閉スペクトラム症—自閉症の発見(情緒的交流の自閉的障害:Leo Kanner)
Autism Spectrum Disorder: Discovery of Autism(Kanner L: Autistic disturbances of affective contact. Nervous Child 2: 217-250, 1943)
神尾 陽子
1
Yoko Kamio
1
1お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所
1Institute for Education and Human Development, Ochanomizu University, Tokyo, Japan
キーワード:
Autistic disturbances
,
Affective contact
,
Eleven children
,
Childhood schizophrenia
,
Parental relations
Keyword:
Autistic disturbances
,
Affective contact
,
Eleven children
,
Childhood schizophrenia
,
Parental relations
pp.1067-1073
発行日 2018年10月15日
Published Date 2018/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205691
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はじめに
1943年に発刊された標題のKanner論文は,既存の疾患では説明できない特徴を有する児童症例11名を,「情緒的交流の生来的自閉的障害」として報告した最初の論文である。これ以降,それまでそれと気付かれていなかった自閉症児はその名前のもとでその姿を現したという意味で,Kannerに発見された。論文発表から75年経た今日もなお,自閉症というと枕詞のように引用されるのは,単に最初の報告であっただけでなく,正統的な記述的精神医学の方法に則りつつも,卓越した洞察力と観察力で子どもたち自身の姿を生き生きと描いているからであろう。Michael Rutterの言葉を借りると,「他人の業績の真価を認めるが権威には追従しない。学究的ではあるが個人には適切な思いやりをもっている。資料は豊かでしかも興味深く書かれている」(文献8)の前書きより)というKannerならではの味わいは,本論文からも十分に感じ取ることができるであろう。
本稿では,まず本論文の概要を示し,その疾病論と病因論について考察を行い,研究および臨床における示唆を述べる。
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